Macの定番動画編集アプリである「Final Cut Pro」は、アップデートでかなり大きな機能追加がされることがあります。Final Cutの10.6.2で「声を分離」というノイズ除去機能が追加されたので、早速検証してみます。
Final Cutの新機能「声を分離」の使い方
これまでにも、Final Cutには「Denoiser」というノイズを抑えるエフェクトがありましたが、ちょっとノイズをマシにできる程度のもので、正直使えるようなエフェクトではありませんでした。
今回追加された新機能「声を分離」はAIを使って背景ノイズを除去する機能です。
使い方としては、音声の設定のところにある「声を分離」にチェックを入れて……
背景ノイズを完全に取るなら「100%」にしておけば問題ないでしょう。
Final Cutの新機能ノイズ除去を使ってみる
では、サンプルとして、ナレーションを収録した音声を使います。
この音声には「サー」というホワイトノイズが全体的に含まれていて、音声レベルを上げると気になるくらいのノイズが聴こえる音声になっています。
「声を分離」を100%にして再生してみます。
すると、ホワイトノイズは完全に消えて、クリアな音声が再生されました。
ちょっと驚くくらい、きれいにノイズが取れます。
これまでのノイズ除去アプリだと、自動でノイズを取った場合には、音声に不自然なエフェクトがかかってしまうことが多いのですが、Final Cutのノイズ除去はとても自然にノイズを除去してくれます。
YouTubeの音声に使う程度であれば、他社製のプラグインを導入する必要がないくらいです。
Final Cutのノイズ除去はどれくらいすごいのか
もうちょっとノイズが酷い音源で試してみましょう。同じナレーターの方が収録した音声ですが、マイクのGAINが小さかったために、ノイズにまみれた音声になっている音源です。
「声の分離」を100%にします。
そして再生してみます。
業務用のモニタリングヘッドホンで聴くと、ちょっと声質がザラザラとしています。完全にノイズで汚れてしまった声質が戻ることはないようです。しかし、スピーカーで聴くなら許容範囲の声質です。
そもそも、この機能は背景ノイズを取る機能ですので、ノイズ除去に特化しているわけではないという理由があります。
「声を分離」だけではノイズが取り切れない場合には、オーディオ解析のノイズ除去も少し加えると良い結果が得られます。
ちなみに、このノイズ除去を100%にしてしまうと、AIが喋っているような変な声になるので注意してください。
わたしが仕事で、このような音源を処理するときには、WAVESの「Clarity Vx」も使っています。
Clarity VxもAIを使ったノイズ除去のプラグインですが、これを使えば完全にノイズで汚れてしまった音声でも、元の声質に戻してくれます。さすがはWAVESといったところ。しかし、WAVESのClarity VxはM1 Macの性能を活かしきれないという弱点があります。
この意味では、M1 Macに対応しているFinal Cutのほうが速くノイズ除去ができます。現在のわたしの使い方としては、Final Cutでノイズ除去できるならFinal Cutで、Final Cutで取り切れないノイズならClarity Vxを使っています。
Clarity Vxは音楽向きですので、部屋の反響をリバーブだと認識します。そうすると部屋の反響がきれいに反響するように処理されることに……。その場合は、Final Cutだと部屋の反響を取ってくれるので、適材適所といったところでしょう。